良心的兵役拒否の青年たちを思い出す
アメリカ・ベトナム戦争、「男らしさ」は命を捨てることと教える思想とのたたかい、人を愛して、人生をよく生きることの選択
■公開収録の様子
5月8日の収録は4つの番組で1時間の放送です。
- 廣瀬さん担当の「まちづくり秘話@岐阜」
- 薮下さん担当の「おもしろ考古学」
- 横山さん担当の「すみこワールドにようこそ」
- 高田さん担当の「女の人生劇場」
さて、ここに、5月8日に収録のあった番組の中から、「女の人生劇場」の内容を一部ご紹介します。(放送日時は、5月31日火曜日朝7時、6月3日金曜日朝7時、夜8時、6月4日土曜日朝9時、6月5日日曜日昼13時、再放送が6月9日、15日、21日、6月27日の各夜8時からの1時間。ここでとりあげている番組は後半すぎから始まります。)
「女の人生劇場」5月8日収録から
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昨年12月に亡くなったアメリカのフェミニスト、ベル・フックスが言語化したtoxic mascurinity有害な男性性、性差別的抑圧が男性に及ぼす抑圧について。
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私は男性ですが、ベル・フックスの本を読んでいくつもの疑問が氷解したことを覚えています。女性はお母さんでもあるのですが、たとえば息子さんが、友達と喧嘩をして泣いて帰ってきた時に、何と言いますか?「男の子が泣いたら、みっともないよ」と言いますか?「やられたら、やり返してきなさい」と言って相手をやっつけろと励ましますか?
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アメリカのトランプ大統領は「相手をkill殺すくらい強くなれと教えられた」とご本人が述べていたようですね。
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彼はあけすけですからね。
男の子の世界では、男らしい男は、泣かない、男らしい男は弱音を吐かない、弱さを見せない、究極、気遣いを見せないという掟を、早くからしっかり学んでいます。泣くと「女みたいだ」と言ってからかいます。弱音を吐くと「女々しいぞ」と言って馬鹿にします。誰かに優しくすると「お前は女か、俺に構うな」と、反発されたりします。こうして、男の子は、自分の感情を押し殺すことを学んでいきます。
この自分の感情を押し殺すというのは、人間としては不自然なことを強いられるわけですから、男の子は快活さを失い、怒りを爆発させることだけが唯一、感情の表現として「男らしい」とみなされているので、感情表現に不器用な男に育っていくと、ベル・フックスは分析しました。
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ジョセフさんのお母様は、どんな方でしたか。
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母は私に、おもちゃの機関銃とか、そのような男の子が欲しがる攻撃的なおもちゃを与えませんでした。母は、殴られてもやり返してはいけない。右の頬を打たれたら、左の頬を出して抵抗しろと、そのように教えました。私の母はそんな人でしたが、実はアメリカでは、フェミニストのように性差別的抑圧をなくそうと運動している人でも息子にそのように対応する人は多くはありません。豊かな感受性よりも喧嘩に勝つ能力の方に男らしさを認める価値観に女性たちもとらわれているのです。
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ハリウッドの映画とか、強い男が英雄として描かれていますね。男の子たちが「男になれ」と言って男らしさを競うのは、支配する男になれという意味で、支配する対象はまずは「女」でしょうか。性差別的抑圧に抵抗しているフェミニストたちが「理想の男性性」に「強さ」というものを求めているのはちょっと辛いものがあります。
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ご存じですか?アメリカでは今から50年前にベトナム戦争をしていました。その時、アメリカでは大変多くの若者がベトナム戦争に反対して、徴兵カードを燃やして、戦争に行かない意思表示をしたのですが、これはある意味、彼らは、今話題にしている性差別的抑圧と闘ったのです。男性に与えられた役割を否定した訳です。
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どういう意味ですか。
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戦争を拒否した理由は、たとえば、「これは正義の戦争ではない」とか「人殺しをしたくない」などの理由もありましたが、ほとんどの若者はただ単に「死にたくない」という気持ちでした。ここがとても重要です。戦争を起こしていたのはアメリカが覇権主義の政策をとっていたからです。この戦争に反対した彼らは、国の覇権主義的政策に反対したと同時に、その戦争を可能にしている思想、資本主義的、白人至上主義的な、性差別主義と身を挺して戦いました。
しかし彼らにとってその立場を選ぶことはとても苦しい選択でした。つまりそれによって彼らは、他の男たちから馬鹿にされました。
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映画とか、テレビでも、戦争で死ぬのが英雄ですね。男たちの世界では、男らしい男は、そうやって死を恐れずに戦って死ぬことを選ぶことになっている。
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だけど、究極的に暴力を拒否して、死ぬことを拒否して、生きることを選ぶ男たちは、よく生きることを望むからそうするのであり、愛を知りたいからそうするのです。身を挺して性差別的抑圧と闘った男たちこそは本当の英雄でした。わたしたちがその人生を知り、讃え、記憶する必要がある人たちです。多くの若者男性が髪を伸ばし、「愛と平和」を唱えた。彼らは両親の価値観を否定したのです。彼らは「ヒッピー」と呼ばれた。今、多くの人がヒッピー文化を失敗と見ていますが、私思うに、ヒッピーの男も女性も何か新しい道、新しい夢を開いたと思います。つまり、人類にとって貴重な動きだったのです。
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兵役を拒否すると、牢屋に収監されましたが、ベトナム戦争の時に若者たちが大量に徴兵カードを燃やして兵隊になるのを拒否したその行動はとても勇気のある、重要なことだったのだと、ベル・フックスは教えたのですね。
さて、時間が来ました。今日の一曲です。ベトナム戦争の時代の反戦歌として有名なこの曲は、もともとはウクライナの古い民謡からヒントを得て、ピート・シガーが歌にしたものです。
「花はどこへ行った」忌野清志郎でお届けします。
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