ベル・フックスの教えたtoxic masculinity有害な男らしさについて語る

3月27日の収録の放送は全て終了しました。

さて、ここに、3月27日に収録のあった番組「女の人生劇場」から内容を一部ご紹介します。ゲストに名古屋工業大学のジョセフ・エサティエさんを迎え、フェミニズムについて学んでいます。ジョセフさんは清水紫琴の「こわれ指輪」を英語に翻訳して紹介された方です。紫琴は家父長制のマインドコントロールから明治初期に解放されたフェミニストであると紹介され、家父長制とは何かを語り合ってきました。本日は、ベル・フックスの理論について語り合います。

「女の人生劇場」3月27日収録より一部紹介

Toxic masculinityは日本でも最近耳にするようになりました。Toixicとは毒があるという意味ですね。「有害な男らしさ」と日本語では表現されています。

男たちが暴言を吐いたり、自滅的な行動をとることがよくあるのですが、アメリカのフェミニスト達は、そのような行動を説明する時にこの言葉を使います。このような種類の男らしさについて、私たちが理解できるようになったのは、ベルフックスの理論があったからです。

ベルフックスは、昨年12月15日に69歳で亡くなった、アメリカの黒人女性のフェミニストです。アメリカのフェミニズム運動が高学歴の白人女性のための運動で、男並みに社会に出て働く権利を主張したが、それを実現するために結局、黒人などの貧しい女性を低賃金で家庭の仕事に動員する結果になって、フェミニストの白人女性達は黒人女性への差別心を内面化していると問題提起をしました。ベルフックスはどう説明していますか?

男が暴力的なのは生まれついての男性性だから仕方がないと一般的には議論されてきましたが、実は私たちの社会が、男の子達を暴力をふるう人間になるように育てている、それが家父長制のせいだと明快に分析したのです。


男の子の育つ世界では、少年同士の仲間の世界で、男らしい男は自分の弱みを見せてはいけない、男らしい男は怖い時にも本音を吐いてはいけない、男らしい男は支配者になる、支配されるのは女々しい女だと了解し、自分は男だと証明するために相手をぶちのめすくらいのガッツがないと負け犬になる。「男であることを証明してみろ」という男の世界では自分が暴力の力で他者を圧倒することができると示すことで仲間から認められるわけです。そのような男の子達の世界で育つうちに、男は暴力を振るってでも支配者になるという価値観が自然に育っています。テレビや映画でもマッチョな男性はあこがれの的です。人生における一番の幸福は他の人間を支配すること、特に女性を支配することだと、教わっていきます。だから、自然に「自分は男だから女より偉い」と思い込む男の子が育っているし、母親達も同じ価値観を持っている場合が多いと思います。世代から世代へ受け継がれている、一つのイデオロギーだとベルフックスは言いました。

最近、私は、国際政治の世界における家父長制について考えてきました。各国の首脳や元首という人たち、トランプやバイデン、安倍晋三やプーチン達は全員が、勇ましいことを言って「男」になろうとしているでしょう。暴力を辞さないことは男になるということです。戦争が始まってからはずっと、プーチンと彼のマッチョなイメージについて考え続けています。ロシアのメディアではこれまで何度もプーチンを、男らしい男、強くて、屈強で、負けない男としての彼の映像を流し続けてきました。
プーチンがバイデンから売られた喧嘩を買ったとして、何の不思議があるでしょう。

戦争が始まってから、プーチンが原発を攻撃したのを見て、原発のリスクを感じた人も多いと思うのですが、元首相の安倍さんとか元維新の会の橋下さんなどは、核武装するべきだという勇ましい議論を始めました。勇ましさを見せることで確実にファンが増えているのですね。

男性の女性への支配という家父長制と暴力を関連付けて考えてみることが、どうしたら暴力をなくせるのかという問題に解決の道を示すとベルフックスは教えました。

これまで女性の立場から、妻は夫に従う家父長制の規範を問題にする議論はしてきましたが、妻、あるいは女を支配するという規範が男性たちに及ぼしている毒性については、初めて聞きます。ベルフックスが問題提起したのですか。

ベルフックスは非暴力の平和運動とフェミニズムを繋ぎました。平和のための運動をしながら女性への暴力を行うのは大きな矛盾でしょう?でも、平和運動の男性たちの女性への暴力は起きています。

そうですね。この日本でも、世界中で起きている人権侵害を告発する報道写真家が、その活動の姿勢に共感して彼を信頼してついてきた女性たちに次々と性的暴力を振るい、内部では独裁者のように振る舞っていたと告発された事件がありました。
女性を支配することと自分が男らしいこととが男性の内面で繋がっているのであれば、無自覚に周りの人を傷つけていたのでしょうね。

支配と従属の関係にあっては、人間の本当の愛情で結ばれることは難しいのではないかと思います。支配と従属の男女関係は、子供の虐待という問題を引き起こしやすいです。保護するという言葉で支配しているのですから。

男たちは妻と子供を自分が守っていると本人も思っているし、社会もそう見ています。でも私から言えば、男たちも実は母や妻から守られているのを忘れたの?もっと言えば、子供たちからも愛情をもらっています。家父長制のイデオロギーに染まってしまうとそこが見えない。

私がベルフックスから学んだのは、人々がお互いを気遣い、互いに愛し愛される明るい未来社会を望むのなら、暴力や自己破壊的な性質や、主人と奴隷の関係のような女性支配の男らしさを終わらせないといけないことです。ひ弱な男性を育てようというのではありません。マッチョな防弾チョッキを脱いで、新しい男らしさ、ビッグなハートの、心の広い新しい種類の人間性を獲得する未来のために、家父長制について議論していきたいと思っています。

今日の一曲

ベトナム戦争の時代の反戦歌として有名なこの曲は、もともとはウクライナの古い民謡からヒントを得て、ピート・シガーが歌にしました。今日の一曲は、「花はどこへ行った」忌野清志郎でお聞きください。

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