ジュリアン・アサンジの解放をお祝いして話し合いました。

みなさん、こんにちは。すみことようこの女の人生劇場の時間です。本日は高田洋子がお送りします。

今日のお客様は、ジョセフ・エサティエさん。名古屋工業大学で教鞭を取られています。

ウイキーリークスの創始者、ジュリアン・アサンジが、長い投獄生活からやっと解放されました。私はジョセフさんと一緒に彼の解放をお祝いする気持ちを話し合います。

英語でホイッスルブロワーという言葉があります。これは、良心的内部告発者のことです。内部告発は、1人で完成しません。その情報を出版する人、出版してその情報を公にする人が必ず必要です。それを担うのは伝統的に、新聞などのジャーナリストです。内部告発者から受け取った情報を精査し、それを公表することが社会のためになるのか、判断し、その情報を編集して出版する仕事。ウイキリークスはそれを新聞ではなく、インターネット上で公開しました。

日本では誤解が広がっているのであえて、最初に説明したいことがあります。日本で最初にウイキリークスが紹介された時、ハッカーという言葉がついてきました。この場合のハッキングとは他人のコンピュータに不正にアクセスして中の情報を盗むという行為を指すと教えられていますから、あたかも、ウイキリークスは、世界各国の政府のコンピュータに不正にアクセスして情報を盗んで、それをネット上に公開して告発したと、そのような誤解です。もしあなたが、ウイキリークスは情報を盗んだと思い込んでいるならば、私がジュリアン・アサンジを擁護することに疑問を持たれるかもしれません。

でも実際は、彼は出版する人でした。ウイキリークスが画期的だったのは、もたらされた情報を暗号化することに成功し、情報提供者を守るシステムを構築したことです。今では、他の新聞社もそのシステムを利用しています。

情報が信用のおけるものであるかどうかは、新聞社も調べるようにウイキリークスも慎重に調べたし、編集されて公開されました。

ウイキーリークスのジュリアン・アサンジの問題とはなんだったのか、表現の自由、言論の自由、報道の自由について、アメリカ人のエサティエさんと一緒に考えます。

Joseph:みなさん、こんにちは。ジョセフ・エサティエです。高田さんのこの番組では一度、ジュリアン・アサンジについて、お話ししたことがありました。

Yoko:そうですね。あの時は、彼はまだイギリスの刑務所にいたので、解放を求める人たちの声を紹介しました。2010年にスウェーデンで女性をレイプした罪で逮捕されたのが最初です。しかし、スウェーデン政府は10年近くも捜査した挙句に、十分な証拠がなくて、結局2019年に訴追を取り下げました。そのあとは、アメリカが、機密情報を出版したことを罪として訴追しました。容疑はスパイ防止法違反です。

Joseph:今年の6月に、彼は解放されて、オーストラリアの家族のもとに帰ることができました。彼は、司法取引をしたと言われています。機密情報を出版したことを認めました。でも本来、機密情報を出版することはアメリカの法律の中では、犯罪ではありません。とはいえ、これ以上たたかわなかったのは、やむを得ないと思います。もう、14年になりますね。長いあいだ、自由を奪われていたので、もう十分、たたかいました。

Yoko:司法取引をしたということは、アメリカ政府も、その方が自分にとっても有利だと判断したと思います。なぜですか?

Joseph:アサンジをスパイ防止法で訴追するとなると、それは恐ろしい前例を作ることになると、わかっているからです。それは、ニューヨークタイムズ問題と言われました。何かというと、

ニューヨークタイムズは、政府の内部告発者から、しばしば、秘密情報を受け取って、それを出版しているのです。だから、アサンジのしたことが犯罪なら、いずれ、NYTimesの記者たちも、いつか、投獄される日が来るわけです。

それに、もし本格的に裁判で、彼の行為をスパイ防止法で争うと、政府が、敗訴する、かもしれない、危険があります。アメリカ市民は、言論の自由が大好きです。アメリカ憲法の修正第一条に違反している、などと、思われたくないし、万が一そうなったら、11月の選挙に、悪い影響があるでしょ。ここで司法取引をして終わらせれば、国民の関心も薄れるから、バイデンは、そっちを選択したと思います。

Yoko:言論の自由のことを考えた時に、ウイキリークスが残したものは何だったのですか?

Joseph:自由と民主主義のために戦う人にとって、ウィキーリークスとジュリアン・アサンジは大事な仕事をしてくれたと思っています。

第一に、資料を暗号化することに成功しました。匿名性が高く、情報提供者が守られるので、親米であろうが、反米であろうが、世界中の政府の腐敗や汚職の事実を、世界中の人々が共有することを、可能にしました。それはきっと将来、正義が行われる道を開いていると思います。

そして、実は、これは、トランプ大統領をすごく怒らせた情報公開でしたが、実は、アメリカでは、国内問題はFBI外国についてはCIAと、法律で決まっている。しかし、CIAがアメリカ国民のプライベートな電話や、メールを、監視していた。しかも、さっきハッキングの話がありましたが、CIAこそがハッキングをして、しかも、誰か他の人がそれをしたかのような、偽旗作戦をしていることも、バレてしまった。政府関係者は、怒り狂っていました。

彼は、ヒラリーとトランプの両方の情報を出して、民主党も共和党も、どちらもが犯罪を犯していることも、明らかにした。だから、二大政党制より、もっと、別のシステムが必要だと、アメリカ市民に、考えさせる機会になったと思っています。

Yoko:ところで、私たちの番組は、フェミニズムの番組ですから、女性の話をしましょう。彼は素晴らしい女性たちに守られてきましたね。2010年の最初からとても理知的な若い女性の弁護士がついていましたし、自由を奪われた14年間の中で、彼を愛する女性に巡り合っています。その話を、聞きたいです。

Joseph:弁護士はJennifer Robinsonです。ロンドンの弁護士事務所に所属するオーストラリア人です。人権擁護派の弁護士として、国際的にも有名な人です。最初からアサンジをキッパリと擁護しています。彼の妻は、Stella Morisです。2年前に、監獄の小さな教会で、結婚式を挙げました。新聞のインタビューに答えてステラは、こう言っています。「これは獄中結婚ではありません。LOVEとRESILIENCEの宣言です。」

Yoko:ラブとレジリエンスの宣言、ですか?レジリエンスというのは、じっと耐えて跳ね返す力のことですね。

Joseph:はい。「ジュリアンと私たち家族へのハラスメント、恣意的勾留、政治的訴追、高い監獄の壁に負けない。」と言いましたね。家族には男の子が2人います。

Yoko:子供たちもやっと、お父さんに甘えることができますね。時間が来ました。すみこと洋子の女の人生劇場、ジョセフ・エサティエさんと高田洋子でお送りしました。ジョセフさん、今日の一曲をご紹介ください。

Joseph:曲は、「ネルソン・マンデラ」です。ネルソンマンデラを解放しなさいと、訴えた歌です。